カテゴリー別アーカイブ: お魚のこと

昭和39年の広報 1面すけそ漁

 またしても、昔のネタでございます。昭和39年12月号の岩内町広報です。その1ページ目にスケソ漁の出漁準備をする写真が載っています。

 通称縄(なわ)と呼ばれるこのザルは、釣り糸とエサのついた針が一枚のザルに芸術的な並びをなしています。上手に説明できませんが、この仕掛けは、浜の母さんたちがコツコツと日中作って出来たものです。

 読んでいると、昔の岩内のスケソ漁のすごさを感じます。たくさん書きたいことがありすぎますので、今回は広報に書いてある文章をそのまま記載してやめます。

「くらやみのなか カケ声も勇ましく出漁準備」

 全町民の大きな期待をになつたすけそ漁がさる十一月十一日午前六時、いっせいにスタートしました 岩壁に集結していた出漁船の六十一隻が、エンジンの音も高々と朝日を背にうけ、勇躍沖の漁場へとかけはせました。(中略)

 雷電沖の漁場では、はえなわをおろす船、たぐりあげる船、漁場は戦場のようなけはいが満ち、ほとんどの船のナワには切れ間がなくすけそがかかって、一同「このぶんなら好漁」と船上はわきかえりました。

 

 今から46年前のことです。

 

釣スケソの鮮度

 岩内沖、檜山地方で漁獲されるスケトウダラ。日本一美味しいたらこを作るために、釣(はえ縄)漁で獲ることが、そうでないものとの鮮度の違いが出てきます。

 小学生が社会見学で工場にやってきて聞く質問があります。「魚の鮮度はどうやってわかりますか?」と。水産の専門家なら、ATP(アデノシン3リン酸)のK値の測定法というものがあるのをご存知でしょうが、このお話はまた今度。

 小学生にわかる解説としては、

1.うろこがしっかりついている。

2.えらの赤い部分が黒くなっていなくて、真っ赤なほうがよい。

3.目が濁っていない。

 写真は、岩内の釣スケトウダラ漁で獲れたものです。いかがでしょう?えらの部分は写真ではわかりませんが、うろこはしっかりまだら模様になっています。網スケソの場合は、このまだら模様がこすれてなくなっています。また、目は子供の目のように澄んでいます。私たちのようないろんな社会の汚い部分を見てきた濁った目ではございません。真中のスケソは釣であることを証明するように、口に釣針が残っていますね。

 スケソは鮮度低下が早いので、時間経過とともに、うろこが落ち、えらの色も黒ずんで、目も白く濁ってきます。その変化の前に、たらこの原料である卵を取り出します。

 漁師さんたちは、この手間がかかる釣の漁をして、鮮度の良いスケソを水揚げしています。加工場では、そのスケソをすぐに腹出し作業へと進みます。ですから、輸入もののたらこや、網のたらことは違い、お値段も高くなってしまいます。「釣たらこ」をお買い求めになるお客様、どうかこのことをご理解の上、お買い求め願います。

スケトウダラの季節が来ました

 岩内では5日からスケトウダラの延縄漁(釣漁)が始まります。今日はスケトウダラについてのお話を少し。一応、「北のお魚大使」なものですから。

 正式和名は、スケトウダラ。地元では、「スケソウ」(助宗)、「スケソ」と呼びます。写真は某中央卸売市場のカレンダーの絵です。そこに特徴として、オキアミなどのプランクトンをたべやすくするために、下アゴが上アゴより長い。下アゴのヒゲはまったくないか、あっても短い。と記載されています。

 マダラと区別するには、ヒゲがポイントということですね。また、オスとメスを区別する方法は、腹びれが大きいほうが、オス。小さいほうがメスです。この区別はたらこを作る業者にとっては重要で、入札前にメスの比率を知る手掛かりとなります。また、いち早くメスと判断し、腹から生の卵を取り出すとき、卵にキズを付けないように包丁の入れる角度を変えるなどのテクニックに利用します。

 スケソの世界は断然、女のほうが地位が上なのです。人間だって同じようなものか。かーちゃんに頭が上がらない人がたくさんいるもね。

?数の子の数?

 ニシンの子は数の子。ニシンを「カド」とも呼ぶことからカドの子が変化し、「カズノコ」となったとされています。

 普通、ニシン1尾の産卵個数は年齢に万をかけた数と考えられています。アラスカで獲れるニシンは4歳から10歳魚が中心で、仮に6歳魚だとすると、6×10,000=6万個の卵をたった1尾が産卵することになります。その多くは成魚にならず、他の魚やクジラのエサになってしまうわけですが、すごい数ですよね。お正月の縁起物、子孫繁栄を象徴する食べ物として数の子があるのは、そんなことからだと思います。

 写真にもあるように、数の子は右向き、左向きがあります。普通、魚卵はひと腹、ふた腹という数え方をするのが一般的です。たらこをイメージしてもらうとわかるのですが、ひとはらというのは、2本が一対になっていますよね。1尾の中には2本入っていて、一部で結合しています。数の子も右と左一対で1尾のお腹の中に入っています。

 しかし、数の子はひと腹という呼び方はせず、一本という呼び方が主流です。1羽(ひとはね)という呼び方もあるようですが、私は現実には聞いたことはありません。

 さて、みなさんが購入された数の子は何歳魚か?1本の数の子の粒子をひとつずつ数えて2万個だったら、その倍の数で4万と予測し、親のニシンは4歳魚だとわかります。そんな事をする奴はいない? そりゃそうですよね。でも、食卓の話題になるでしょ。クジラに食べられずに生き抜いた数の子を召し上がっているのです。数の子を食べる人は生命力が強いのです。

 

公開講座~水産生物資源の減少と環境

 岩内地方文化センターで行われた、小樽商科大学公開講座を聞きました。タイトルは「水産生物資源の減少と環境」。講師は八木宏樹先生。夜の6時半からの受講ということで、眠くなってしまうかなと思いましたが、お話の内容が興味あることでしたので、しっかり聞くことができました。

 不思議なもので、学生時代は授業中よく居眠りをしていたのですが、実際の仕事に係ることとなると、真剣に聞いてしまうんですね。学生時代もこんなふうに真剣に授業を聞いていたら、また違った人生だったかも・・・と思うだけなら、いくらでもできますね。

 この日の先生のお話は、水産資源とエサについてのことを中心のお話。異常気象や、人為的ないろいろな条件で水産資源が減っていることは予測はつくが、実証するためには、地球規模の実証実験が必要になるとのこと。

 岩内湾のスケトウダラの資源は、今より増えることはなく、いかに今の資源を少なくしないか。そのために、エサ場の環境悪化をしない努力をすべきと。

 なーんだ、昔のようなスケソの大漁は期待できないのか~。とがっくり肩が落ちてしまいました。でも確かに、ゼロになってしまったら、どうしようもありません。少しでも資源を守るために、できることは何かを考え、行動をしましょう。

 とても1時間半のお話の内容を、まとめる力は私にはありません。ご了承ください。

数の子の規格(個質編)

 先週の数の子の規格(大きさ編)に続きまして、今週は個質編をお話させていただきます。

 一口に数の子と言っても、大きさがいろいろあることはわかっていただいたと思います。では、卵の状態によっていろんな呼び名があるのをご存じでしょうか。

 写真の一番上から、変形卵、マガイ、ダルマ、フリコ、というものがあり、それぞれ固さなどの違いから食感が違うので、いろいろな用途に使い分けされます。それぞれの価格も違ってくるのです。この写真は、個質の違いのわかりやすいものですが、このほかにも若子、モロ子など細分化すると、さらにあります。

 簡単に言えば、卵の成熟度の違いです。最初は未熟卵で、若子に相当します。それから成熟卵になるにつれ、マガイ、モロコと変化し、排卵の段階になると、ダルマ、フリコと変化していきます。

 大きさは機械による選別が可能ですが、この個質に関しては、女工さんの目と手にかかっています。マガイと成子の違いを迷わず一瞬で見極めることができたら一人前です。

 一言でいえば、「ニシンの卵」なのですが、こんなに種類があって、それぞれの呼び名があるというのは、数の子くらいではないでしょうか?それだけ日本の食文化に大きな影響のある食材だと思います。

数の子の規格 (大きさ編)

 日本人特有の商品価値というものに、規格があります。野菜や果物の箱等を見ると、そこにはLとかSとかついていますね。それと同様に水産物についても同じような規格が存在します。

 ソフト身欠にしんでも、1kgで10枚入りとか、12枚入りなどなど。では、数の子はというと、めちゃくちゃ種類が多くて一回では説明しきれませんので、何回かに分けて説明させていただきます。

 写真のように、大きさがかなり違いがありますね。グラム数で分けられており、『5特大、4特大、3特大、特特大、特大、大、中、小、小小』となります。写真の一番大きな物は、5特サイズで80g以上あります。真ん中は、特特サイズで、50gくらい。一番小さいのが中サイズで15gくらいのものです。

 同じ海域で獲れたニシンであっても、こんなに大きさの違いがあるんですね。数の子メーカーは、このサイズによっていろんな形態の作り方を要求されます。ひとつの化粧ケースに大小ごちゃ混ぜですと、見栄えが悪く売れないのです。数の子は食べるだけでなく、見せることも重要なことなのです。これもまた日本の食文化です。時代に合わないと言ってしまえばそれまでですが・・・・

第4回 『北のお魚研修会』 のお知らせ

  このブログでの私の名前は「北のお魚大使」です。平成21年3月に行われた認定試験に合格して、この「北のお魚大使」という称号をいただきました。北海道だけの試験です。

 受験に際しては、北のお魚研修会という講座を3日間受けなければなりません。第1回目、第2回目の受験は、受講から約1か月後に、試験を受けるものでした。第3回の受験からは、申込時に教科書が送られてきて、受講3日目の最終日に試験を受けると言うものです。ですから、当然予習は必要ですが、講座を真剣に聞いていれば、その部分しか出ないという解釈もあります。

 第1回目の受験は47人で合格者9人。第2回目は私のときで12人受験の2人合格。第3回目は9人受験の1人合格。ですから、「北のお魚大使」と言える人は、全世界で13人しかいません。

 受験しなくても、講座は北海道の魚の色々な知識を教えてくれます。私のような魚の加工をしている人間にとって、なるほどと思うことが山のようにありました。伝統の技術と一口で言っても、ちゃんとした科学的裏付けがあることもわかりました。実習では、タラバとアブラガニの食べ比べなど、おいしい体験もできます。魚に関してはちょっとうるさいぞと思う皆さま、是非ご参加をおすすめをいたします。

 問い合わせは社団法人北海道食品産業協議会へ。

数の子は国によって違いがあります

 一口に数の子と言っても、世に出回っているのはいろんな種類が存在します。ニシンは北半球の寒い地方で漁獲されますが、大きく分けると、アラスカからカナダ西海岸を中心とする太平洋産、オランダ、イギリス付近の大西洋産、ロシア、カムチャッカ地方などがあります。

 皆さんがお正月におせちに入れる数の子はカナダ産、アメリカ産が中心になると思います。大きさや粒子の固さ等の違いがあり、業界では、カナダ産が一番高価だとされています。ただし、これは、食べ物ですから、好き嫌いがあり、アメリカ産の粒子の方が好きだという人います。人間に黒人、白人黄色人種があるように、ニシンもその漁獲される海域によって、特徴が違います。その違いを利用して、私たちは、美味しいものへと加工していきます。

 気を付けていただきたいのは、カナダ産には太平洋産と大西洋産があり、太平洋産は立派な数の子ですが、大西洋産は和えもの等に使われ、お値段も安いです。食べてみると、ぼそぼそといった食感でコリコリ感はありません。お値段だけで購入して、がっかりしたというのは良く聞く話です。

 年に一度しか買わないお客様もいるわけですから、そのへんの違いを私たち業界でもっと数の子についての知識をオープンにすべきと考えます。売り場の方も昔は数の子に対する知識を持っていたのに、だんだんとそのスペシャリストがいなくなっているのも残念ですね。

 私ができることは、まずこのブログで、ニシンと数の子についての知識を少しずつお話することからです。

どこ産の数の子かわかりますか?

秋サケ漁始まる

 13日、市場は定置網漁の秋サケが水揚げされていました。船体にびっしり詰まった秋サケがクレーンで何度も引き上げられています。タンクに上げられたサケは、市場の中でオス、メス、キズ、等に手作業で仕分けされていきます。

 岩内で今漁獲されるのは、標準和名「サケ」。呼び名は「シロサケ」「秋サケ」の他、「アキアジ」と呼ばれます。このアキアジという呼び名はいいですね。秋の味。そんなビールもありましたっけ。成熟して、体に縦の筋ができてくると(婚姻色)、ブナと呼ばれ、それぞれその度合いから、Aブナ、Bブナ、Cブナと分けられ価格に差が出ます。さらに、産卵後の状態はホッチャレと呼ばれ、食べても美味しくありません。

 と、サケの好きな方なら当たり前のことを書いてしまいましたが、このように呼び名だけでもたくさんの種類があるのは、魚食文化の典型と言えるでしょう。アイヌ語でサケの総称をカムイチップ(神の魚)と呼びます。

 今日は豊漁でしたが、これがどこまで続くかは、わかりません。放流したサケの稚魚が戻ってくる確率は5%もあるかどうかです。長旅をして立派な姿になったサケを、みなさんはどんな料理で召し上がりますか?