カテゴリー別アーカイブ: お魚のこと

サクラマスの季節です

 市場では、「本ます」がちょっとずつ見かけられるようになってきました。

 写真を見て、お魚の素人さんには、サケとどこが違うのだと言われるかもしれません。でも魚で商売をしている人、釣好きの方にとっては、何を言っている!と言われそうです。

 一応、北のお魚大使の称号を持っているので、簡単に説明いたします。正式和名はサクラマス。分布は極東海域のみで、アメリカ側の海域には分布していないのが特徴です。

 サケやカラフトマスは生まれると1年以内に海に降りてしまいますが、サクラマスは降海するまでに1年~2年かかります。ずっと海に行かないものもあります。川に残っているものをヤマベと言います。

 さっさと海に行ったものは、体長も大きくなります。エサの違いがあるでしょう。しかし、生きる上ではリスクは海の方が高いと思います。さて、あなたがサクラマスの稚魚だったら、さっさと大海に出ます?じっくり川に残ってから海に出るか、はたまた海に出ずに一生を終えるか?

新造船がやってきた

 26日、岩内港にひときわ目立つ大漁旗。車が何台も近くに止まり、人もたくさん集まってきました。新造船がやってきたのです。

 こんな風景は何年ぶりでしょうか?(北海道新聞には19年ぶりと書かれていました) 今は船を手放す人の方が多いのに、こうして新しい船を作るのは、なかなか大変だと思います。事実、船は作ったはいいが、魚が獲れなくなったら困るよなという声も聞かれます。でも、現実離れした大きな船ではなく、省エネタイプだということですから、素直にお祝いしてあげましょう。

 さて、金刀比羅神社さんを呼んで、一通りの儀式を済ませ、餅まきをしたと思います。みなさんの地方では「餅まき」はしますか?新築の建前(上棟式)のときも昔は「餅まき」をしましたね。今では、ほとんどそんな風景を見ることはできなくなりました。

 船の前にぶら下げられた日本酒。いいですね。この写真を撮っていたら、「写真撮影は5,000円だよ!」と。そんな冗談も出てくる喜びが満ちていました。豊漁であることを私も願います。

魚箱について

 獲れた魚は、どのような容器に入るのか?昔は4寸箱と呼ばれる木の箱が主流でした。今は、発泡スチロールのさまざまなサイズがあり、魚種によって使い分けられているようです。全国的に統一されているのは、スルメイカの箱でしょうかね。

 さて、この4寸箱とは、1寸が約3.03cmなので、12.12cm。深さのことなんですね。でも、弊社にある4寸箱を測ってみると、内側の深さではなく、外側の深さでした。木の厚みを含めています。

 先日、昔弊社で「箱打ち」をやっていた人が訪ねてきました。箱打ちとは、スケトウダラを入れる4寸箱や日本海マスの新巻を入れる箱を、敷地内で釘を打って組み立てることを言います。製材工場では、木材を切る仕事だけで目いっぱい。釘打ち作業は、工場の空き地でアルバイトが釘を打って組み立てるのです。

 金銭は請負なので、出来た分だけの支払いです。真新しい4寸箱が次から次へと使われて行きます。それだけ、岩内では魚が獲れていたんですね。写真のバンドはPPバンドと言って、荷物の梱包に使われる丈夫なものです。このバンドを持って運びます。昔は針金を巻いていました。そのまた昔はむしろ縄を使っていました。40年も50年も前のお話でした。

ローソクボッケ

 前浜では、ローソクボッケが揚がっています。体長18~22cm程度の俗に言うローソクのように細長いホッケです。

 ホッケは稚魚から大きくなるにつれて、アオボッケ(体長4~16cm)、ローソクボッケ、ハルボッケ(23~25cm)、ホッケ(25cm以上)、ネボッケ(35cm以上)と呼び名が変化していきます。

 さて、たくさん獲れるローソクボッケは、いまいち美味しくありません。かまぼこの原料の他、養殖の魚のエサ、畜産用のエサや畑の肥料、海獣飼育用というのが大きな用途になります。水族館で、アシカのショーなどで、お兄さんが御褒美でポケットから取り出して、小さな魚を食べさせているのを見たことありませんか?あれですよ。

 直接人間には食べてもらえないんですね。加工の仕方では、いろいろと提案できるかもしれませんが、小さい魚というのは、手間がかかり、人件費の下になってしまうというのが、北海道の水産加工の一般的な考えです。でも、このような概念を払しょくしなければ、新しいものは生まれませんね。

 

小樽の海に群来が見えました

 群来(くき)という言葉をご存知でしょうか?ニシンに携わる人は、もちろん知っていますよね。海岸にニシンの群れが産卵に訪れ、海が白子で真っ白になる状態を言います。

 写真は2月4日の朝、小樽の海岸です。ちょうど出張で札幌方面行の電車に乗っていて見ることができました。前日のニュースで群来が見えたと報じていましたので、もしかしたら見えるかもと思って、外を眺めていました。

 普段の海の色との比較ができないので、皆さんにはわかりにくいかもしれませんが、この時期の海は濃紺色のはずが、パステルカラーとなっていました。一部には白い泡のところもありました。

 昔はこの状態が日本海に延々と続いていたというのですから、すごいことですよね。近年の稚魚の放流事業が実を結んだ結果なのかわかりませんが、嬉しい景色であることには違いありません。

スケトウダラの棒干

 今が旬のスケトウダラ。岩内ではスケソと短縮して呼びます。このスケソはいろいろなものに加工されます。すりみの原料はもとより、弊社で作っているみりん干など。でんぶもありますね。

 スタンダードなものが棒干(ぼうぼし)です。内臓と頭を取り除き、ハラスの部分をそぎ落としてうろこを落とす。これをうすい塩水につけてから乾燥させる。一夜干しのものは、焼いて食べる。からからになるまで乾燥させたものは、金槌でたたいてむしって食べます。

 この棒干、昔は外に納屋を作って乾燥させていました。冬場の寒さでシバれ、気温が緩んで自然のあんじょう乾燥となり、旨みが出るのです。今は、残念ながら衛生的な問題と、シバレが昔ほど強くない等の理由で、外では干しません。

 弊社では、昔はトン単位で作っていたのですが、今はこの時期限定で、少しだけこの棒干を作っています。ホームページに載せるほどではないのですが、ご希望の方はお問い合わせください。丁寧に身卸しをし、うすい塩味は海洋深層水を使っているので、天然ミネラル豊富な美味しい仕上がりになっていますよ。

たつかま

 昨年末、北海道新聞の1面に岩内の名産「たつかま」の記事が紹介されました。

 珍味好きの方ならご存知ですよね。スケトウダラの白子を使い、食塩とつなぎを少し入れる程度で作られたかまぼこです。初めて食べた人は、その不思議な食感にびっくりされるでしょう。

 そのまま醤油、ワサビでお刺身風に食べるのがベーシック。お味噌汁に入れる。天ぷらにするなど、いろいろな料理方法があります。

 このたつかま製造は、岩内町の小さなお店や個人でやっています。私たちのような工場では作っていません。手作り感いっぱいで、大量生産できないのです。近年のテレビで取り上げられ火が付きました。今では注文してから送られてくるまで、かなりの順番待ちのようです。

 昔はほとんどタダ同然の値段で取引されていたスケソの白子「タツ」ですが、今は立派に出世しました。スケソの町、岩内ならではですね。なお、一般的には白子はタチと言います。岩内では「タツ」なのです。

生助子

 たらこの原料となるスケトウダラの卵巣、私たちは生の卵のことを生子(なまこ)と呼んでいます。12月になると身入りもよくなってきます。その分、仕入れ値もどんどん釣り上がっていくのです。

 たらこはなぜ赤くするのか?実はこの原料の本来の色に原因があったのです。写真のように、右と左ではまったく色目が違いますね。さらに血管がなまなましい。見た目もグロテスクで、食欲がわいてこないと思います。その見た目を良くすることから赤くすることが始まったのではないかと推測されます。

 一方、このスケトウダラの卵をたらこではなく、煮付けにしてお正月料理などにする本州のご家庭も多いと思います。特に関西方面の方はなくてはならない商材ですね。昔は「鯛の子」として神戸のスーパーで売られているのを見てびっくりした記憶があります。今は表示の問題から、ちゃんとスケトウダラの子として販売されていると思います。

 関西の市場では、この生助子の仕入を年末の大イベントにしていると思います。入荷が少ない年は、いつもの3倍の値がつくこともあります。担当者はシケで船が出たかどうか、漁模様はどうか気が気でならないと思います。今がまさにその時で、クリスマスどころではないでしょう。

12月の漁火

 普通、漁火というと、夏の風物詩の代名詞ですが、12月になった現在もイカ釣漁の船が何隻か岩内にとどまり、漁をしています。先日の夜はそのイカ釣り漁の明るさで、夜空の雲が見えるほどでした。

 日本海を南北に回遊するイカ。日本海南部~東シナ海で孵化したスルメイカは、成長しながら北上し、9月頃から産卵のために日本海南西部に移動します。

 理屈で考えると、今は冬なのだからさっさと南に戻ればいいのにと思ってしまいますが、今、岩内沖にいるスルメイカはどのような回遊をしてここにいるのでしょう?

 北のお魚大使なら答えろと言われると、口ごもってしまいます。今度また調べておきます。知っていることは、日本海海域での来遊群は、秋生まれ群と冬生まれ群とで構成されていると言うことです。スルメイカに「あんた何月生まれ?」と尋ねることができるといいのですが・・・

道新後志版でスケトウダラ漁を紹介

 北海道新聞岩内支局の長谷川記者が書いた、岩内のスケトウダラの釣漁の記事が11月20日の朝刊に載りました。カラー版で、スペースも久しぶりに大きなものとなりました。地元では、スケソ、スケソウと呼ぶほうが多いですが、正式和名は「スケトウダラ」です。

 長谷川記者は、今回スケソの釣船に早朝から乗り込み、漁師さんとともに一日を過ごしてこの記事を書いたということです。やはり、記事を書くなら、この実体験はいいですよね。簡単に船に乗り込んでと言っても、素人の人が漁師の船に乗ったらほとんどの人は船酔いと一種独特の匂いによって、ゲロっち状態に陥るようです。過去にもTVクルーが犠牲になったのを私は知っています。

 長谷川記者いわく、餌のサンマの臭いは強烈でしたが、なんとか大丈夫でしたと。記事はとても良くまとまっています。ちゃんと釣がどのようなものかという図解説明もあるし、生きたまま上がってくる写真もありますから、なぜ鮮度がよいかわかります。

 岩内にいても、このスケソの釣というものがどのようなものであるか、ほとんどの人がわかっていませんね。この記事は聞きとりだけでなく、足でしっかり調べたので立派とほめて上げましょう。願わくば、資源が枯渇している状況を踏まえ、どのような対策が必要かを問題提起する記事がほしいです。長谷川記者、これからもがんばってください。

 さて、釣たらこのお求めは、一八からお願いいたします。