今、休業中のワイススキー場。倶知安駅からバスで20分ほどの位置にあります。私が経験したワイススキー場でのことをお話します。
小学6年ころからの私はスキー小僧でした。一年間の小遣いをすべてスキーにつぎ込むほど。そして、一人でバスを乗り継いではヒラフなどのスキー場に行ってました。
たしか小学6年の時の冬、一人でワイススキー場に行き、滑ったときのこと。そのころはまだ上手ではなく、よく転んで真っ白になっていたものです。大転倒をした後、リフトに乗ろうとすると、輪ゴムで腕につけていたリフト券はなくなり、胸のポケットに入れていたお財布も飛び出てなくなっていたのです。
リフト乗り場で呆然としていたら、乗車口のおじさんは、「乗って探しに行け」とリフト券なしで乗せてくれました。ところが、転倒場所は深雪でまったく落し物はわかりません。ポケットのファスナーもちゃんと閉めていなかったようです。
ずっと探してもなく、あきらめてロッジに戻りましたが、家に帰るためのお金もありません。不安な時間はどんどん経っていきます。だれかに頼るしかないと決心し、自衛隊らしき姿の優しそうなおじさんに、「お財布を落としちゃって帰れなくなっ・・・・」と勇気を振り絞って言った瞬間に涙がポロポロと溢れました。
おじさんはニコッと「そうか、乗せてやるから一緒においで」と言ってくれました。倶知安まで自衛隊のトラックに乗せてくれたのです。降りがけに「岩内までのバス代もないんだろ」と言って、バス代もくれたのです。
何かをお返しをしたいけれど、何もない。リュックサックに、みかん2個を入れてあったので、それを差し出し、「ありがとうございました」と言ってお別れをしました。
なぜあの時、メモでもいいから名前と連絡先を聞かなかったのだろうと後悔しました。みなさんもそう思うでしょう。でも、小学6年です。それにあの時の不安な心理状態では、精一杯の行動でした。
もしこうしていたら、ということはその後何度も考えました。乗せてくれたおじさんへのお礼ができなかったことが唯一心残りです。でも、どこかでその恩は「人の優しさ」という形で、どこかのだれかに伝えていきますので、お許しください。
写真は、ヒラフスキー場花園第2付近から見える、現在のワイススキー場(休業中)です。