一八興業水産株式会社の2代目である代表取締役会長の紀八郎が、2017年10月10日16時59分、岩内協会病院で亡くなりました。91歳。
昨年の10月は持病はあるものの、自転車に乗っていたほどの元気な体でした。昨年12月より体調を崩し自宅での療養をしておりました。今年の夏休みを境に体調が悪化し、日に日に衰弱してきました。本人の強い希望でぎりぎりまで自宅での治療をしておりましたが、10月4日に病院に搬送された後、10日に力尽きました。
大正15年生まれの紀八郎は、幼い時から家を出て都会での下宿生活をし、厳しい戦中戦後を経験。中央大学法科を卒業し、弁護士になりたかったものの、傾きかけた一八を見過ごすことができずに一八に就職。その後は破天荒に生きる先代紀伊右エ門の取った行動の後を、金銭のみならずさまざまな後始末の仕事をこなして一八を支えてきました。
一方で、岩内海産商協同組合の理事長として18年間。その間、原発立地など業界の大問題で揺れる中、組合員の融和をはかるために一社一社を説得に歩き回るなど、自身には何の得にもならぬことを地道に行う姿は、痛々しくも感じるものでした。
告別式の日、見事な紅葉でした。火葬場に行く途中では、パラパラと雨が降るような天候。それはお別れの「涙雨」と呼ばれるもの。介護中に息子の私に声を振絞って言ってくれた言葉があります。「岩内に帰ってきてくれて、ありがとう。岩内を好きでいてくれてありがとう」と。