八興会館の管理人である、大泉さんからお借りした資料に、『財団法人八興会館 創立30周年記念祝賀会』の記念誌があります。その中には「30年のあゆみ」というタイトルで、創立の昭和38年2月から平成5年の9月までの子供たたちが残した、さまざまな大会での入賞の記録などが載っています。
今日は、その中の一部に昭和40年9月1日発行の「八興会館のあゆみ」より記載してある、館長である紀伊右エ門の昭和38年八興会館落成式のあいさつ文をそのまま転記いたします。
——————————————————————————–
紀 館長 挨拶
一八の商号で皆様から多大のごひいきに預かっております紀でございます。
本日この八興会館の落成式に、ご多用のところわざわざご臨席くださいまして、ご祝詞やご祝儀を頂戴いたし、まことに有りがたく厚くお礼申しあげます。
一八の親爺が、商売に関係のないこのような大それた会館建設などをどうして企てたのか、さぞかし皆様には不思議に思われたことと存じますので、いささか平素感じております一端を申し上げたいと存じます。
池田首相の真似ではございませんが「国づくり」の基礎が「人づくり」であることは申すまでもございません。それには住みよい環境と施設を与えて、明るく楽しい健全な「場」で、次代を担う子供をすくすくと成長させてやりたいということは独り私のみの願いではございません。然るに岩内の町は、教育上よい施設や環境に恵まれているとは、決して申されないのであります。
こういう点から、私は先年も大浜海水浴場の施設に微力ではございますがいささか努力いたしました。また、伝馬船十余艘を備えつけ、これらのご利用に資したり、昨年は円山のスキー小屋の建設にも協力させて頂いたわけであります。
しかし、何と申しましても、年間を通じて利用ができ、かつ日本古来の武道の練磨によることが、肉体と精神の両方向の修養に一番効果があるものと考え、道場の建設を思い立った次第であります。幸い町内有志の方々や、その道の専門の方々のご支援をえまして、昨年11月この会館の建設に着手し、本日落成して開館の運びに至りました。
もとより私は、裸一貫で遠く佐渡より渡ってまいりました風来坊でありまして、何の教養も資力としてございません。従いまして、今後の維持運営や青少年の育成につきましては、全くの素人でわからないわけであります。何卒この上とも、町長さん始め町議会議員、町教育委員会、PTAその他町有志の方々の特段のご支援とご指導を仰ぎまして、この会館がますます充実され、青少年の健全な育成に多少とも寄与できますことを祈念する次第であります。
本日は私の多年の夢の一端が現実しました喜びと感謝の気持ちを申しあげましてお礼のご挨拶といたします。まことにどうも有りがとうございました。
バックナンバーはこちらから
これまで八興会館の記事をあちこちで拾い読んでいましたが、このブログのおかげで、まとめて読むことができました。岩内の歴史の一こまとしても、素晴らしい記事です。最後に掲げられた、落成式における紀館長のご挨拶は、さすがです。見事というほかありません。これを読んで思うのは、教育というものを考えるとき、学制とかカリキュラムとか教員研修とか、あまりにも学校の枠組みにとらわれ過ぎだということです。市井にこうした無私の教育者がいた岩内の文化に奥深さを感じました。どっこい今もその伝統は生きていて、毎朝ラジオ体操を主催しておられる今田金治さん(88歳)もその衣鉢を継ぐ方だと思います。10月10日の最終日に出席者に渡される表彰状はご本人が雪かきでためたお金によるものだと聞いています。ちなみに、近田さんも新潟出身です。
八興会館の記事は、「その八」まであります。
素晴らしい記事とお誉めいただき、さらに先代の挨拶を見事と言っていただけると、さぞかし紀伊右衛門もあの世から微笑んでいることでしょう。
八興会館に触れると、私は後ろめたさがあります。
運営していた当時は、回りの家族はその行動に振り回され、大変な苦労をしていました。
私も子供心に両親が苦労していることを肌で感じ、爺さんのことはよく思っていませんでした。
偉人とは所詮そんなものなのかもしれません。
孫として上手に接することができないお詫びとして、八興会館のことを文章として残すことを決めて書いたものです。
事は目立たないかもしれませんが、人のためにコツコツと続けてくださる方がいます。
utokaさんがラジオ体操でお世話になっている今田さんも確かにその通りですね。
町民栄誉賞があったら、是非。
近田さんという方は?ごめんなさい、どなたでしょう?
その八はもちろん一番に読みましたよ。なんと言っても一八さんですからね。そこから一に遡って全部読んだというわけです。まさにGood job!と拍手を贈りたくなりました。隔世遺伝ということで、お孫さんにDNAが受け継がれるケースが多いと聞きます。八興会館に匹敵するのがこのブログかもしれません。
近田さんという方は、妻が入院した時、同時期に協会病院に入院しておられた体操仲間の村岡さんをお見舞いに来られ、偶然病院ロビーお会いし、親しくお話をうかがうことができました。やはり大浜の方のようです。毎年、スポーツ体育功労賞を受けておられるので、てっきり町から補助金が出ていると思っておりましたが、自腹で全部やっていると仰っていました。偉い人です。
あの紀伊右衛門のDNAがあると言うのは、非常に複雑です。
それほど、人間として良くも悪しくも普通の人ではありませんでした。
このブログが八興会館に匹敵すると言うのは、さすがにレベルが違いすぎます。
私は今あるもの、出来ることの範囲以内でしかやらない人間ですが、伊右衛門はないにも関わらず、やってしまう人だからです。
人間、補助金に頼っていると進歩がありません。
逆に足かせになってしまい、書類を作らねばならないことに追われ、本末転倒。
行政は、そんな方がいることをいろいろな形で取り上げ、お金でなくとも何かしらのご褒美を出してあげてもいいですね。