ニシンは世界的に豊富な資源を有しているにもかかわらず、日本での消費は年々落ち込んでいることに危機感を持っています。体に良い成分DHA、EPAが豊富で健康志向の現代にもいいはず。しかし、食べられなくなった原因は何でしょう?
大きな要因は二つ。1つは小骨が多い。もうひとつは独特の臭みが強い。もちろん、ニシン好きの人にとっては、それらの要因はどうでもいいこと。ですが、若者や女性に食べてもらうには、それらの弱点を克服しなければならないと考えて、新しい商品づくりに取り組み始めました。2014年春のことです。
ニシンの加工食品は、甘露煮、身欠にしん、糠にしん、昆布巻などの純和風の商品ばかり。そこで洋風の商品を作ろうと考え、オイル漬けに着手。小骨対策、および常温流通の商品にするために、レトルト処理を検討。ただ、弊社ではレトルトの機械を所有していないので、岩内町地場産業サポートセンターの機械を使っての試作が始まりました。
それからは、ひとつ問題点をクリアーしてもまた次の問題が。サイズと乾燥度合い、味付けのために調味をどのようにするか、塩分はどうか・・・。実験を繰り返すうちに何を目的にしていたかも忘れるような方向へ。
最大の問題はニシン特有の臭みをどのように抑えるか。ニシン好きの人にとってはその味がニシンだろうと言います。しかし、今回はニシンを食べない人に食べてもらう商品づくりでしたので、最後までこだわりました。
釧路フィッシュの平野社長は、サバを原料にホエイを使って臭みを抑えることに成功した第一人者。それをヒントに黒松内町のトワ・ヴェールさんのホエイを使っての実験をすると、格段の効果が表れました。
オリーブオイルには塩は融けません。そこで、塩分は海洋深層水とホエイをある割合で調合し、その液に漬けこんでから乾燥させる方法を確立しました。
この商品には、多くの人たちがかかわってできています。にしんすぱという商品名は、若い資材を担当する営業のMさんが、「にしんそば」があるなら、「にしんスパゲッティー」も洋風としてどうでしょう?「にしんすぱ」とつけましょうと提案してくれました。若い人のやる気を感じる私はすぐに採用決定。
岩内町地場産業サポートセンターの若手技師Kさんはオイル漬けの原案者。彼との二人三脚が続きました。ノーステック財団のI氏は出来上がっていくまでの中で、経験を通した的確なアドバイスやマーケティングのお手伝いをしてくれました。
デザイナーのS氏は料理監修のタベルナ・ナルさんを紹介してくださり、何よりS氏がニシンをあまり好きではなく、臭みがいやだと言ったことが、私に火をつけました。この人に「うまいと言わせたい」。
こうして2016年4月、身欠にしん屋が作った洋風ニシンの「にしんすぱ」が誕生しました。ニシン文化の新しいページとなってくれることを願い、さらなる改良を加えたくさんニシンを食べていただけるよう、これからも努力し続けます。
代表取締役 紀 哲郎